「エンジンオイルは車の血液である」――これは車好きなら誰もが知る格言です。しかし、時速300kmの世界で戦うアスリートの血液と、穏やかに街を歩く私たちの血液では、その中身も役割も大きく異なります。
今回は、TAKMOが誇る技術的視点から、実際にTAKMOが開発車両として使用している世界最高峰のGT3マシン「アウディ R8 LMS GT3」を例に挙げ、レーシングオイルと一般オイルの間に横たわる「深くて熱い違い」を徹底解説します。この記事を読み終える頃には、あなたのオイル選びの基準がガラリと変わっているはずです。
1. 舞台設定:アウディ R8 LMS GT3が戦う「地獄」のような環境
まず理解していただきたいのは、レーシングカーのエンジン内部がいかに過酷かという点です。アウディ R8 LMS GT3に搭載されている5.2リッターV10エンジンは、最高出力500馬力を超え、レブリミット(回転数の限界)は8,000回転以上に達します。
想像を絶する「熱」と「速度」
一般車が高速道路を時速100kmで走る際、エンジン回転数はせいぜい2,000〜3,000回転です。しかし、レース中のR8は常にフルスロットル。ピストンは1秒間に130回以上も上下運動を繰り返し、金属同士が猛烈な摩擦熱を生み出します。オイルの温度は130℃、140℃と上昇し、放っておけばオイルは水のようにシャバシャバになり、油膜が切れてエンジンは一瞬で焼き付いてしまいます。
強烈なG(重力)との戦い
さらに、レース特有の「横G」も厄介です。猛スピードでコーナーを曲がる際、エンジン内部のオイルは遠心力で片側に思い切り寄せられます。これを防ぐために、R8のようなレーシングカーは**「ドライサンプ方式」**という特殊な仕組みを採用しています。

【専門家コラム:ドライサンプ方式とは?】
> 一般車はエンジンの底(オイルパン)にオイルを溜める「ウェットサンプ方式」ですが、レース車は別個のタンクにオイルを貯蔵し、ポンプで強制的に循環させます。これにより、どんなに激しいコーナリングでも安定してオイルを供給できるのです。
2. 違いの核心①:ベースオイルという「骨格」の質
エンジンオイルの約80〜90%を占める「ベースオイル」。これがオイルの基礎体力を決めます。
ベールオイルに関しましては、こちらの記事に詳しく解説しているのでここでは割愛いたします。
レーシングオイルの多くは、最高級の「エステル」を贅沢に使用します。エステルの分子はプラスの電荷を帯びており、マイナスの電荷を持つエンジンの金属表面に**磁石のようにペッタリと吸着**します。
一般オイルが「油の膜で浮かせる」イメージなら、レーシングオイルは「金属に強固なバリアを貼り付ける」イメージです。エンジンを始動した直後の「ドライスタート」でも、エステルが吸着していれば金属同士の摩耗を防いでくれるのです。
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3. 違いの核心②:添加剤の「目的」が180度違う
ベースオイルに混ぜる「添加剤」の配合レシピこそ、メーカーの腕の見せ所です。しかし、一般用とレース用では、そのゴール地点が全く異なります。
一般オイルに大切なことは愛車を守るための「清浄作用と長寿命」
一般車のオーナーは、一度オイルを換えたら5,000km、あるいは1万km走ることを期待します。そのため、一般オイルには「清浄分散剤」という洗剤のような成分が大量に入っています。エンジン内部に発生するススや汚れを包み込み、長期間エンジンを綺麗に保つのが仕事です。
レーシングオイルの正義は「摩擦ゼロと保護」
一方で、R8 LMS GT3のようなマシンは、1レースごとにオイルを抜いてしまいます。つまり、「半年後の汚れ」なんて気にする必要はありません。その代わり、1馬力でもパワーをロスしないよう、摩擦を極限まで減らす**「摩擦調整剤(フリクションモディファイア)」**や、極圧下で金属を守る**「摩耗防止剤(亜鉛やリンなど)」**を限界までブーストしています。
実は、掃除用の添加剤を入れすぎると、保護用の添加剤の邪魔をしてしまうことがあります。レーシングオイルは「清浄作用を捨ててでも、速さと保護を獲る」という、ストイックな選択をしているのです。

4. 違いの核心③:「せん断」に耐える粘り強さ
ここで少しマニアックな話をしましょう。「せん断(せんだん)」という言葉をご存知でしょうか?
エンジン内部では、ピストンとシリンダーが高速で擦れ合っています。この時、オイルの分子はハサミで切られるようにズタズタに引き裂かれます。これが「せん断」です。
そこで、せん断に対抗するために、オイルの粘度を調整する「ポリマー(増粘剤)」という成分が使われます。そして、やはりポリマーに高級品と廉価版が存在します。
一般用のポリマー:安価ですが、激しいせん断を受けると鎖が千切れ、オイルがすぐにサラサラになってしまいます。
レース用のポリマー:非常に強固な分子構造を持ち、引き裂かれても性能を維持します。あるいは、そもそもポリマーに頼らず、ベースオイル自体の粘度で勝負する設計になっています。
アウディ R8のような高回転エンジンでは、この「せん断安定性」が命。150℃という極限状態での粘度を示す**「HTHS粘度(高温高せん断粘度)」**において、レーシングオイルは圧倒的な数値を叩き出します。

5. 一般車にレーシングオイルを入れても「最強」にはならない理由
「そんなにすごいなら、自分のプリウスやアルファードにも入れたい!」と思うかもしれません。しかし、専門家として断言しますが、それはあまりおすすめできません。理由は3つあります。
① 触媒(キャタライザー)へのダメージ
レーシングオイルに含まれる強力な保護成分(亜鉛やリン)は、実は車の排ガスを浄化する「触媒」にとっての毒になります。レース車は触媒がない、あるいは特殊なものを使っていますが、一般車に入れると排ガス浄化性能が落ち、最悪の場合、高価な触媒を壊してしまう恐れがあります。
② 水分への耐性
一般車は「ちょい乗り」が多く、エンジン内部に結露(水分)が溜まりやすいのが特徴です。一般オイルにはサビを防ぐ成分がしっかり入っていますが、短期間交換前提のレーシングオイルは、こうした水分への長期耐性が低い場合があります。
③ 燃費の悪化
レーシングオイルは高温時の保護を優先するため、低温時は少し「重い」傾向があります。冬場の始動性や、近所のスーパーへの買い物といった用途では、燃費を悪化させてしまうだけになりかねません。

6. TAKMOが提案する「理想のオイル選び」
では、私たちはどうすればいいのでしょうか?
アウディ R8 LMS GT3のようなレースの世界で培われた「エステル技術」や「高せん断安定性」を、一般道でも使えるようにバランスさせたのが、TAKMOの製品ラインナップです。
普通に街乗りだよ!というユーザー様には、ストリート最強の万能バランス:TAKMO HIGH QUALITYシリーズやハイブリッド車や高年式の現代スポーツカーに対応したTAKMO HYBRIDシリーズがお勧めのエンジンオイルとなります。
私たちは、レース用オイルの「強靭な油膜」をベースにしながら、市販車に必要な「清浄性」と「触媒への優しさ」を独自の配合で両立させました。
■サーキット派ならレーシングスペックに近い高粘度・高保護タイプ。TAKMO X-TREMEシリーズやMICRO TIANIUM MELTシリーズがお勧めです。因みに、実際にスーパーGTやスーパー耐久レースで使用されているエンジンオイルは X-TREME 5W-50 です。
■街乗り・高速クルージング派なら:** 燃費と静粛性を重視しつつ、エステルの保護膜でエンジンを守る低粘度タイプ。
「何を選べばいいか分からない」という方は、まずは自分の車の「メーカー指定粘度」を確認してください。その上で、TAKMOのような信頼できるブランドのオイルを選ぶ。それだけで、あなたの愛車の寿命は劇的に延び、エンジン音は驚くほど静かになります。
こちらもぜひご覧ください。
まとめ:オイルは「愛車へのいたわり」
本格的なレーシングカーに使用されるオイルと、私たちが使う一般的なオイル。その違いは、**「どの瞬間に、何を守るか」**という哲学の違いでした。
レースの世界は、勝つための「一瞬」に全てを賭けます。
一方で私たちの日常は、大切な人を乗せて「何年も、何万キロも」安全に走り続けることが目的です。
TAKMOは、そのどちらの情熱も理解しています。極限のレースフィールドで得たデータを、あなたの日常を支える1缶に凝縮する。それが私たちのこだわりです。
次のオイル交換の時、少しだけ「ベースオイル」や「エステル」のことを思い出してみてください。あなたの選択が、愛車の未来を変えるはずです。
私たちはいつでも「愛車を守る品質。」をご提供いたします。

”愛車を守る品質。”
”クルマ好きのカーライフを豊かに”

【ラインナップの一部をご紹介】
高回転を多用する乗り方、スポーツカーで峠を攻める!という方は、燃費よりもパワーを出せる高粘度のエンジンオイルがお勧めです。
高粘度エンジンオイル(例)
MICRO
TITANIUM MELT(マイクロチタン)シリーズ
5W-30/5W-40/10W-55/15W-60
高性能エンジンオイル+マイクロチタンによる潤滑性能とエンジン内部クリーニング作用をプラス。パワーアップした愛車を長く乗りたい方に最適です。
0W-40/5W-50/10W-40/10W-60
ハイパワー車、高性能車、サーキット走行に求められる性能を純粋に追求したモデル。愛車本来のパフォーマンスを発揮したい方に最適です。
高粘度というのも、あくまでSAE粘度10~20番アップが限界だと考えてください。
それ以上の硬いオイルを使用するとオイルの粘度にエンジンパワーが負けてしまい、エンジン回転数の上昇が遅くなりクルマが重く感じるようになります。
5W-30 → 5W-50 or
10W-40 or 10W-50
もちろん、チューニングを施して、エンジンパワーを上げている車両はこの限りではありません。
低粘度エンジンオイル(例)
0W-16/0W-20/0W-30
燃費を重視する乗り方や、始動性が気になる方、国産の高年式スポーツカー(メーカー指定粘度が0W-20/0W-30)にお乗りの方は、こちらの低粘度エンジンオイルであるHYBRIDシリーズがお勧めになります。
ちなみに、HYBRID(ハイブリッド)と言うネーミングですが、ハイブリッド車用と言う訳ではなく、2種類のベースオイルにハイブリッド処理を行い、製品化したことから名付けられました。ハイブリッド車以外にも使用できます。
中粘度エンジンオイル(例)
5W-20/5W-30/5W-40/10W-40
普段は街乗りでサーキットには行かないけど、たまにアクセル多めに踏むよ、という方で、コスパの良い高品質なエンジンオイルを使いたい!というユーザー様へ最適なエンジンオイルです。
当社の主力製品でもあります。
「解説は読んだけど、やっぱり自分で選択するのは不安だ…!」という方へ!
TAKMO(旧TAKUMIモータオイル)では皆さまに合ったオイルや添加剤に関するアドバイスを受け付けております。
こちらのリンク【適正オイルのご質問】よりお気軽にお問合せください。
TAKMO(旧TAKUMIモータオイル)では、高性能ギアオイルもご用意しております。
75W-90/80W-90
/ 75W-140/85W-140
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